肩関節周囲炎(五十肩)における地域の課題
はじめに
肩関節周囲炎とは、一般的には40歳~50歳代に起きることが多いというイメージがあるため、通称で「五十肩」や「四十肩」と呼ばれております。耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
肩関節周囲炎とは、肩に痛みとこわばりが数ヶ月、時には数年にわたって続く状態を指しております(NHS, 2024)。特徴的な症状としては、夜も眠りづらくなるほどの肩の痛み、肩に生じた痛みやこわ張りによって腕が動かしづらいといったことがあります。
肩関節周囲炎になりやすい年齢は、40~60歳までの間で最も多いのは55歳、女性が男性よりも比較的なりやすい(1.4:1)、そして非利き手になりやすいと言われております(Li et al., 2025)。
介入方法と現状の課題
肩関節周囲炎は主に下記のステップで介入されます(NHS, 2024)。
- 薬剤療法による痛みの緩和
- 運動療法による動かしづらさの改善
肩の痛みやこわばりの程度に応じて、これらの介入を一般的には組み合わせて行うことがあります(NHS, 2024)。しかし、この一般的な知見について地域からのニーズとして挙がりやすいのは、「働かないといけないのに、肩が痛すぎて集中できない」ということです。上記にも挙げました40歳~60歳は、就労されている方が多いと思います。
癒着性関節包炎
実は、この肩関節周囲炎は総称であり、症状が誘発される要因には色々とあります。そのため、理学療法士としては、その背景を知った上でリハビリを行うことが必要になります。今回は、肩関節周囲炎の症状となる要因の内、「癒着性関節包炎」について考えます。
癒着性関節包炎の経過は、個人差が大きいことが特徴で、下記の各段階は持続期間が異なり、症状も異なることが特徴です(Li et al., 2025)。
- 凍結進行期(英語ではfreezing phseとされていますが正式な和名はありません。ここでは、分かりやすくすためにあえて和訳しております):この段階では、初期に夜間時に肩の痛みと腕の動かしづらさが合わさり、痛みが強まることです。この段階が2~9ヶ月続くことが多いです。
- 凍結終期(英名:frozen phase。正式な和名はありません):痛みが軽減し、長引く肩のこわ張りが特徴的です。腕をどこに動かしても関節包の伸張性が低下し、肩の可動域を制限してしまっています。この段階が4~12ヶ月続くと言われております。
- 解凍期(英名:thawing phase。正式な和名はありません):痛みが徐々に軽減し、腕の動かしづらさに改善がみられてきます。
つまり、医学的には癒着性関節包炎が改善するには、非常に長いプロセスが必要ということになります。では、理学療法士として行えることはどのようなことでしょうか。
地域のニーズに応えるために

図1: 動きが生じるまでの神経学に基づいたプロセス:ここで重要なことは、黄色のPlan & Program(動きの計画)に向かって脳の様々なところと連携し合っていること、そして、青色のIntention(動きの意図)がなければ、筋肉に向かっていく矢印は進まないことに留意されたい。
肩関節周囲炎に悩まれる多くの方々は、「痛みをおして働く必要がある」という年齢層と考えます。そのため、「働きながら通える」ということが地域の課題であると考えます。そして、経過に個人差があり、お仕事で必要な動きにもそれぞれ違いがあり、日々の生活様式も異なるということになりますと、リハビリも個人に合わせる必要があります。そのご自分の中での理想的な動きのイメージが、ご利用者様が行えていることが非常に強みであると考えております。なぜなら、あなたの脳がこれから行う動きをイメージし、計画していなければ、実際に起きた動きとの差が分からず、動きをいつまでも学習しづらい状況にあるためです(図1)。それがあるからこそ、理学療法士は「どの方向に、どの程度、どのような感じで」といったことがわかります。ご利用者様と理学療法士の共有なくして、リハビリのプログラムは成り立ちません。ぜひ、ご利用者様の強みを活かして、リハビリに取り組んでいただけますと幸いです。
参考文献
- Li, D., St Angelo, J. M., & Taqi, M. (2025, March 28). Adhesive capsulitis (frozen shoulder). StatPearls [Internet]. National Library of Medicine. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK482193/
- NHS. (2024, June 24). Frozen shoulder. https://www.nhs.uk/conditions/frozen-shoulder/
- Takakusaki K. (2017). Functional Neuroanatomy for Posture and Gait Control. Journal of movement disorders, 10(1), 1–17. https://doi.org/10.14802/jmd.16062
- Takakusaki, K., Takahashi, M., Noguchi, T., & Chiba, R. (2022). Neurophysiological mechanisms of gait disturbance in advanced Parkinson's disease patients. Neurology and Clinical Neuroscience, 11(1), 4–13. https://doi.org/10.1111/ncn3.12683


