なぜ担当の療法士によってリハビリの方法が違うの?~「思考の引き出し」のお話~
リハビリを受けている最中や、他の病院・施設の話を聞いたとき、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「担当する先生によってリハビリのやり方やアプローチが全然違うのはなぜ?」
病院や訪問、そして私たちのような自費リハビリの現場でも、療法士(理学療法士など)によって大切にしているポイントや手法が異なることがあります。実はこれには、医療・リハビリの世界における「臨床推論(りんしょうすいろん)」という専門的なプロセスが深く関係しています。
今回は、なぜ療法士によってリハビリの方法が異なるのか、その理由と考えらえることを分かりやすく解説します。
療法士の頭の中にある「臨床推論」とは?
私たちが患者様・利用者様のお身体に触れ、リハビリを行うとき、ただやみくもに体を動かしているわけではありません。目の前の方の「なぜ動きづらくなっているのか」「どうすればその人らしい生活に戻れるのか」を頭の中で論理的に組み立てながら施術を行っています。これを「臨床推論」と呼びます。
学術的な研究1-5でも示されている通り、この臨床推論にはいくつもの種類や戦略があります。
- 身体の構造や医学的なデータに強く着目する視点
- 患者様ご自身の生活背景やストーリー、価値観に重きを置く視点
- その場の環境や実践的な状況を重視する視点
このように、一言で「リハビリの思考」と言っても、どの視点やプロセスに重きを置くかは、療法士によってさまざまです。
「引き出し」の数が違う、中身も違う
料理にたとえるなら、同じ「お肉」という食材を前にしても、和食の職人とフレンチのシェフでは、調理法や味付けの引き出しが異なりますよね。
リハビリも同じです。
- 学生時代に、どのような教育やベースを学んできたか2-3
- これまで臨床現場でどのような症例を経験し、どの理論や概念を深く掘り下げてきたか1, 4-5
こうした背景の違いによって、療法士一人ひとりが持つ「思考の引き出し」のラインナップや、得意とするアプローチの組み合わせが変わってきます。これが、「先生によってやり方が違う」と感じる理由の一つかもしれません。
違うからこそ、あなたに合った選択肢が広がる
「じゃあ、どのやり方が正解なの?」と思われるかもしれません。
しかし、人の身体や生活の困りごとは十人十色です。一つの正解だけを押し付けるのではなく、担当する療法士が持つ「それぞれの引き出し」から、その人に最も適したアプローチを柔軟に選択できることこそが、リハビリの奥深さであり、強みでもあります。
「この先生はどんな視点で身体を見てくれているんだろう?」 そんな風に、たまには担当の療法士に「今のリハビリはどういう意図でやっているの?」と聞いてみるのも、新しい発見があって面白いかもしれません。
あなたの身体に向き合うリハビリの裏側には、療法士それぞれの熱い「思考のプロセス」が詰まっています。
参考文献
- Edwards, I., Jones, M., Carr, J., Braunack-Mayer, A., & Jensen, G. M. (2004). Clinical reasoning strategies in physical therapy. Physical therapy, 84(4), 312–335.
- Gilliland, S., & Wainwright, S. F. (2017). Patterns of Clinical Reasoning in Physical Therapist Students. Physical therapy, 97(5), 499–511. https://doi.org/10.1093/ptj/pzx028
- Maruyama, S., Sasada, S., Jinbo, Y., & Bontje, P. (2021). A concept analysis of clinical reasoning in occupational therapy. Asian Journal of Occupational Therapy, 17, 17–25. https://doi.org/10.11596/asiajot.16.119
- Schell, B. A., & Cervero, R. M. (1993). Clinical reasoning in occupational therapy: an integrative review. The American journal of occupational therapy : official publication of the American Occupational Therapy Association, 47(7), 605–610. https://doi.org/10.5014/ajot.47.7.605
- Huhn, K., Gilliland, S. J., Black, L. L., Wainwright, S. F., & Christensen, N. (2019). Clinical Reasoning in Physical Therapy: A Concept Analysis. Physical therapy, 99(4), 440–456. https://doi.org/10.1093/ptj/pzy148


